計算ミスをなくすための最も効果的な方法とは?【原因の発見とその対策】
「計算ミスをしてしまうのはどうしようもない」、「計算ミスをなくすことはなかなかできない」と思っている生徒や受験生がいるかもしれませんが、「計算ミス」はなくすことができます。
計算ミスをしてしまうのは、「たまたま」、「うっかり」、「その時注意がたりなかったから」ではすまされない、ちゃんとした「原因」があるのです。
ちゃんとした「原因」があるからには、当然、その「対策」もあります。
そうです。「計算ミス」はなくす方法があるのです。たとえ計算ミスを完全になくすことはできなくても、最小限にまで減らす方法は間違いなくあるのです。
果たしてその方法とは、一体どんな方法なのでしょう?
「計算問題を制する者は数学の試験を制す!」
普段の中間・期末の定期試験、そして入学試験の時の数学の問題では、難しい応用問題を解くことよりも基本的な計算問題を間違いなく正解することの方が、結局は合計得点を確実にアップすることにつながります。
難しい応用問題は、正解までたどり着けるかどうかは、結局のところ最後まで解いてみないと分かりません。
結果的に何点取れるかは、その応用問題を解くために必要な解法パターンを憶えているかどうか、憶えていたとしてもその解法パターンの組み合わせ方とパターンを使用する適切な順番をその時に思いつくか(ひらめくか)どうか、にかかっています。
したがって、途中まで解けたとしても最後まで解けなかったら正解は得られず、得点には結びつかないのです。
学校の定期試験では、途中までは解けたとして部分点というのをもらえることがあるかもしれませんが、入学試験ではそうはいきません。マークシート方式で答える場合は、まず点数をもらえることは絶対にないでしょう。
それに対して、基本的な計算問題の方は、正解すれば確実に点数を獲得することができます。つまり、計算ミスさえしなければ必ず得点を稼ぐことができるのです。
基本的な計算問題は、基本的な理解とある程度の問題演習さえしておけば、全問正解することも不可能ではありません。つまり、確実に得点できる「お宝問題」なのです。この基本的な計算問題で得点を稼いでおかないと、上位の成績を目指すどころか合格点を取ることさえ難しくなってしまいます。
ということは、大袈裟な言い方をすれば、
「計算問題を制する者は数学の試験を制す!」
と言えなくもない、ってことです。
今回取り上げるのは、基本的な計算問題の「計算部分」、および、応用問題の解答の最後の部分、すなわち、自分で設定した方程式なり計算式の「計算部分」において、「計算ミスをどうすればなくすことができるか」についてです。
では、早速、見ていくことにしましょう。
計算ミスをしてしまう「原因」は四つあります
まず最初に、計算ミスをしてしまう「原因」ついてですが、計算ミスを起こしてしまう「原因」には、次の四つがあります。
第一の原因は「基本概念の理解不足」。
第二の原因は「問題演習の不足」。
第三の原因は「計算ミスをしやすい計算の仕方」。
第四の原因は「ケアレスミス」。
普通、「計算ミス」というと、第四の「ケアレスミス」のことだけを意味して語られることが多いのですが、「計算ミス」を引き起こす原因は、実は「ケアレスミス」だけではないのです。
本当に「計算ミス」をなくしたいのであれば、第一から第三までの「原因」も見逃さないで、しっかりと「対策」をしなくてはいけません。
ということで、今から順番に、これら四つの「原因」が計算ミスを引き起こしてしまう「メカニズム」と、計算ミスを冒さないようにするための「対策」について見ていくことにしましょう。
計算ミスの第一の原因「基本概念の理解不足」とその「対策」
計算ミスをしてしまう第一の原因は「基本概念の理解不足」にある、と言いましたが、そもそも「基本概念」とはどういうことを指して言っているのでしょうか?
ここで言っている「基本概念」とは、その数学の分野(テーマ)の出発点となる重要な前提、言い換えれば、大切な土台となる考え方のことです。
例えば、
方程式とはどういうもので、どういう場合に使われるのか、
2次関数とはどういう式で表され、グラフではどういう形になるのか、
ベクトルとはどういうもので、どう表され、何を意味しているのか、
確率とはどういうもので、どうやって計算すれば数値を出すことができるのか、
といったような、重要な基礎となる考え方のことです。
この「基本概念の理解」が不足していると、計算をしていても、
この計算をして何を出そうとしているのか?
何をしようとして今この計算をしているのか?
計算した結果出てくる数値は何を意味するのか?
が、全く分からないまま、平気でおかしな計算を続けていってしまうことになりかねません。
例えば、確率の計算問題で、1を超える数値を出しても全く気づかずに先に進んでいってしまう、なんてことが起こってしまいます。
しかし、確率についての「基本概念の理解」が十分であれば、確率の数値が1を超えることは(確率密度の問題でもない限り)ない、と途中で気づいて、
「あれ、1を超えてしまった、おかしいな?」
「どっかで計算を間違えちゃったのかな?」
と、ここで一旦計算を止めて、
前を振り返ってみてどこで間違ったのかを点検し、勘違いをしたところを発見し、そこから正しい計算をし直すことで「計算ミス」を防ぐことができるのです。
つまり、「計算ミス」を引き起こす第一の原因である「基本概念の理解不足」は、あくまでも基本概念の理解が不足していることによって計算ミスをしてしまうわけですから、
それを防ぐための唯一の「対策」は、「基本概念をきちんと理解しておく」、ということになるのです。
基本概念をきちんと理解していないで計算問題を解いていても、この計算で出てくる答えは何を表すのか、何を出すためにこの計算をしているのか、が全くわかっていなかったら、
適当に数字を当てはめて出した答えがたまたま正解だったとしても、次に正解できる保証はありません。
ゆえに、教科書に書かれていることや、先生の説明、あるいは参考書の記述を手掛かりにして、その数学の分野(テーマ)についての基本的な事項を理解しておくことが必要になってくるのです。
ということで、計算ミスをしてしまう第一の原因は「基本概念の理解不足」であり、その「対策」は「基本概念をきちんと理解」しておくことである。
これは、よろしいでしょうか。
計算ミスの第二の原因「問題演習の不足」とその「対策」
問題演習が不足していると「計算力」が身につかず計算ミスが多くなる!
次は、計算ミスをしてしまう第二の原因「問題演習の不足」についてです。
せっかく、基本概念をきちんと理解していても、実際に問題を解く時には「計算力」が必要になってきます。
いくら頭で理解していても、いざ実際におこなってみると、すぐにはできません。できるようになるまでには、ある程度の練習をおこなうことが必要なのです。
例えば、「泳ぎ」を覚える場合、いくら「水泳教本」のテキストを読んで頭で理解したとしても、それだけでは泳げるようにはなりません。実際にプールに入って泳ごうとしても泳げないのです。
実際に「プール」で泳げるようになるには、ある程度「実際にプールで泳ぐ経験」をしなくてはならないのです。
同じように、実際に「海」で泳げるようになるには、ある程度「実際に海で泳ぐ経験」をしなくてはなりません。
数学の計算問題も同じです。
実際に計算問題を解く力を身につけるためには、ある程度「実際に計算問題を解く経験」をしなくてはならないのです。
頭で計算の仕方を理解しているだけではダメなのです。「実際に計算問題を解く経験」をある程度積み重ねなければ、「計算力」を身につけることはできないのです。
そうです。この「計算力」というものを身につけるためには、十分な「問題演習」の繰り返しが必要なのです。
この十分な「問題演習」の繰り返しってやつは、避けて通ることはできない、ある程度の我慢と忍耐が必要な、いわば「修行」ののようなものです。つまり、避けて通る「うまい話」や「楽な道」はないってことですね。
小学生の「算数」の場合で例をあげてみましょう。
ここで、いきなり問題を出してみますね。
しちろく=(答えはいくつですか?)、
つまり、7×6=? という問題です。
答えはもちろん、分かりますよね。
でも、九九の練習が足りない小学生の場合は、すぐに正解が出てきません。無理に答えを言おうとすると間違ってしまうことが多いのです。
原因は明らかですね。そうです。九九の練習量が絶対的に不足しているのです。
九九を身につけるためには、頭で考えてではなく何も考えないで九九を唱えることができるまで、ひたすら練習を繰り返す必要があるのです。
このひたすら練習を繰り返すってことは、避けて通ることはできない、ある程度の我慢と忍耐が必要な、いわば「修行」ののようなものです。つまり、避けて通る「うまい話」や「楽な道」はないんですね。
「計算力」を身につけると数学の試験問題を解く時に圧倒的に有利になる!
ということで、計算ミスをしてしまう第二の原因は「問題演習の不足」であり、その「対策」としては、「実際に計算問題を解く経験」をある程度繰り返すこと、つまり、「計算力」が身につくまでひたすら練習を繰り返すことが必要である、ということなのですが、
「計算力」を身につけることは、「計算ミス」をなくす、あるいは「計算ミス」を減らすことに役立つだけではなく、もう一つ、数学の試験問題を解く時に圧倒的に有利になる、という側面があるのです。
それを説明する前に、ここでもう一度、問題を出してみますね。
7+8 =(答えはいくつですか?)、
そうです。答えは15ですね。
頭の中で、どうやって計算しましたか?
もちろん、計算なんかする必要はなく、条件反射で、答えは15と答えることができたと思います。
でも、「計算力」がまだ身についていない小学生だと、頭の中で次のような計算をします。
7+8
=(5+2)+8
= 5+(2+8)
= 5+10
= 15
または、
7+8
= 7+(5+3)
=(7+3)+5
= 10+5
= 15
あるいは、
7+8
=(5+2)+(5+3)
=(5+5)+(2+3)
= 10+5
= 15
つまり、10の位に1が繰り上がる理由の説明の仕方(理解の仕方)はいろいろありますが、自分にとって一番しっくりするやり方(理解しやすい説明)を選んで、とにかく15という答えを出せばいいのです。
そして、このような計算を繰り返して練習していると、そのうちに、10の位に1が繰り上がるということを考えることなく、条件反射で答えが浮かんでくるようになります。
つまり、10の位に1が繰り上がる理由を理解することは「基本概念の理解」ですが、ある程度の計算練習を続けることによって、条件反射で答えを出せる「計算力」が身についてくるのです。
そのいい例が、そろばん教室の生徒たちです。そろばんの得意な生徒は、頭の中でそろばんの珠(たま)を動かすことによって瞬時に答えをはじき出すことができます。
画面に連続して映し出される数字を、そろばんを使わずに暗算で計算する「フラッシュ暗算」という競技では、3桁の数字15個の和をなんと2秒もかからずに計算できる生徒もいます。羨ましいですね。
そして、このような「計算力」が身についてくると、当然のことですが、数学の試験の時に、計算問題の答えを出すのが速くなってきます。
計算問題だけでなく、応用問題でも、自分が考えて設定した計算式を計算する時の計算時間を短くすることができます。
これは、圧倒的に有利になるということです。
計算問題、および、応用問題の計算式の計算部分を短い時間で計算できるということは、残りの時間を応用問題を考えるために使えるということですし、検算をする時間として使うこともできるということですから、数学の試験の時には圧倒的に有利になります。
「計算ミス」を身につけることは、計算ミスを防ぐだけでなく、数学の試験問題を解く時に時間の余裕を生み出すことにもなるのです。
計算ミスの第三の原因「計算ミスをしやすい計算の仕方」とその「対策」
次は、計算ミスをしてしまう第三の原因「計算ミスをしやすい計算の仕方」についてです。
実は、「計算の仕方」には、「計算ミスをしやすい計算の仕方」と「計算ミスをしにくい計算の仕方」とがあるんです。
「え~っ!、計算ミスをしにくい計算方法なんて、そんなのあったの~っ?」
っていう声が聞こえてきそうですが、実はあるんです。そんな方法が。
ずばり、言ってしまいましょう。
「計算ミスをしにくい計算方法」とは、次の五つの方法です!
第一の方法は、=(イコール)は改行して縦に揃える、ということ
第二の方法は、計算式をできるだけ簡略化する、ということ。
第三の方法は、数字同士の計算は最後までそのままにしておく、ということ。
第四の方法は、計算過程を省略しない、ということ。
第五の方法は、計算の順序を工夫する、ということ。
これら五つの計算の仕方は、そのまま、計算ミスをしてしまう第三の原因「計算ミスをしやすい計算の仕方」の「対策」になっています。
すなわち、「計算ミスをしやすい計算の仕方」をしているから計算をミスっちゃうんだから、そうならないようにするための「対策」として、第一から第五までの「計算ミスをしにくい計算方法」で計算をしましょう、ということです。
では、具体的にどういう計算の仕方をすればいいのか、順番に見ていきましょう。
計算ミスをしにくい計算の仕方の第一は=(イコール)を縦に揃えること
第一の方法は「=(イコール)は改行して縦に揃える」ということ。
なぜそうすると良いのかは、以前に書いた記事「数学で数式の計算をする時には「=」(イコール)の位置を縦にそろえよう!」で説明済みですので、そちらの方をご覧ください。
計算ミスをしにくい計算の仕方の第二は計算式をできるだけ簡略化すること
第二の方法は「計算式をできるだけ簡略化する」ということ。
例えば、共通の数字(係数)や文字でくくることができる場合はすぐに共通の数字でくくって、計算式を簡略にしてしまいましょう。簡略にしたほうが計算ミスを冒しにくいのは当たり前のことですよね。
方程式の場合でしたら、少数や分数をそのままにしておくと計算ミスをしやすいので、両辺に同じ数値をかけることによって整数に直してしまった方が、その後の計算が楽になります。
計算ミスをしにくい計算の仕方の第三は数字同士の計算は最後までそのままにしておくこと
第三の方法は「数字同士の計算は最後までそのままにしておく」ということ。
数字同士の計算を途中の段階でしてしまうと、後で共通の数字で約分できたり、共通の数字でくくることができる場合に、逆の計算を余計にしなければならなくなってしまうからです。
したがって、数字同士の計算は最後の最後まで待ってからした方がいいのです。
計算ミスをしにくい計算の仕方の第四は計算過程を省略しないこと
第四の方法は「計算過程を省略しない」ということ。
これには二つの理由があります。
一つ目の理由は、計算過程を省略する時に計算ミスをしやすい、ということ。
計算過程を省略するということは、その部分を暗算(頭の中で計算)ですますということです。そもそも、暗算は計算ミスをしやすいのです。ですから、できるだけ暗算はしない。
特に複数の暗算を同時にするのはそれだけケアレスミスを冒す機会が増えることになります。同時に二つ以上のことをするとどちらかをミスってしまう確率が高くなることは言うまでもありませんね。
二つ目の理由は、計算過程を省略してしまうと、計算ミスをした場合、後で計算ミスをした箇所を探そうとしても見つけ出すことが難しくなってしまう、ということ。
暗算(頭の中で計算)をしてしまうと、その計算過程は目で見える形では書き残されないので、後で計算ミスを発見しようとして見直す時に見つけることが難くなってしまいます。
したがって、途中の計算過程は省略せずにきちんと書いておく、ということが大事になってきます。
計算ミスをしにくい計算の仕方の第五は計算の順序を工夫すること
第五の方法は「計算の順序を工夫する」ということ。
実は、計算問題というのは、最初にどこから計算し始めるかで、その後の計算が簡単になったり難しくなったりすることがあります。
つまり、計算の順番を工夫することによって、計算ミスを冒してしまう確率を低くすることができるのです。
最初にどこから計算を始めればいいのか、その次はどこの計算をすればいいのかは、ある程度の問題演習をこなすことで分かるようになってきます。したがって、これも「ひたすら問題演習を繰り返すのみ」です。
以上、見てきたように、
数学の計算問題を解く時には、
=(イコール)は改行して縦に揃える、
計算式をできるだけ簡略化する、
数字同士の計算は最後までそのままにしておく、
計算過程を省略しない、
計算の順序を工夫する、
という、できるだけ「計算ミスをしにくい計算の仕方」で計算をするように心がけましょう。
計算ミスの第四の原因「ケアレスミス」とその「対策」
次は、計算ミスをしてしまう第四の原因「ケアレスミス」についてです。
数学の計算問題において「計算ミス」をするということは、ほとんどの場合「ケアレスミス」をするという意味で使われていることが多いようです。
したがって、「計算ミス」=「ケアレスミス」というように考えている方もいるようですが、これまで見てきたように、計算ミスは全てが「ケアレスミス」で起こるわけではありません。
「ケアレスミス」以外の原因で起こってしまう計算ミスについては、これまで見てきたように、
「基本概念の理解不足」、
「問題演習の不足」、
「計算ミスをしやすい計算の仕方」、
という、三つの「原因」がありました。
しかし、これら三つの原因を全てクリアしていたとしても、それでも「計算ミス」を起こしてしまうのが「ケアレスミス」なのです。
「ケアレスミス」をしないようにしよう、と注意していても起こってしまうのが「ケアレスミス」なのです。
では、「ケアレスミス」はなくすことができないのでしょうか?
答えは、「ケアレスミスを完全になくすことはできないが、最小限に減らすことはできる」です。
数学の試験で起こってしまう代表的な「ケアレスミス」の例は?
「ケアレスミス」を最小限にまで減らすためには、「ケアレスミス」がなぜ起こってしまうのか、について理解しておかなければなりません。
ケアレスミスが起こってしまう「原因」を知らなくてはケアレスミスを防ぐ「対策」を立てようがないからです。
では、ケアレスミスが起こってしまう「原因」とは何なのでしょうか?
それを考えるにために、まず、どんな「ケアレスミス」があるか、代表的なものを挙げてみましょう。
・指定されている条件を見落としてしまう(つい、うっかり、うかつにも、やってしまうことがあります)。
・数字や符号を間違えて書き写してしまう(答えが全然違ってしまうのでこれは完全にアウトですね)。
・解答を記入する欄を間違えてしまう(マークシート方式で答える時には致命傷となります)。
以上が、ケアレスミスの代表的な例ですが、それでは、こういったケアレスミスは何が「原因」で起こってしまうのでしょうか?
「ケアレスミス」が起こってしまう「原因」とは何なのか?
ケアレスミスを引き起こす「原因」としては、少なくとも次の二つが考えられます。
第一は、「脳の疲労」です。
どんな人でも、長時間にわたって脳を使い続けると脳が疲れてきます。そして、脳が疲れてくると、当然のことですが、脳の活動能力が減退してきます。
脳の活動能力が減退すると、理解力が低下し、思考力も低下し、判断力も衰え、集中力も続かなくなり、その結果、ケアレスミスを起こしてしまうことになるのです。
筋肉の疲労と同じですね。筋肉も使い続けると運動能力が減退してきますから。
「脳の疲労」が原因で起こるケアレスミスは、脳の疲労を回復することによって防ぐことができます。
疲労状態に陥り前頭前野の血流低下がみられた脳の疲労を回復させるために、目を閉じて安静にさせた場合と、ガムを噛ませた場合と、精油の香りを嗅がせた場合(アロマテラピー)とで、大脳皮質前頭前野の脳血流に与える影響を測定した実験がありますが、
試験を受けている最中の受験生には、この三つのどの方法であっても適用はできません。
試験時間中に「安静」? そんな時間とれませんよね。
試験時間中に「ガム」? 試験監督の先生に注意されちゃいますよね。
試験時間中に「アロマテラピー」? 絶対に無理でしょう。
確かに「脳の疲労」を回復させるのには効果があるのでしょうが、実際には、試験を受けている最中の受験生には適用できません。
ということは、試験を受けている最中の受験生は、脳が疲労している状態で試験を受け続けなければいけないわけで、脳の疲労状態は回復するどころかさらに悪化していくことが避けられない、ということになります。
したがって、ケアレスミスは、必然的に、当然のごとく、当たり前に、どうしても、起こりやすくなってしまうのです。
しかし、それでもケアレスミスをしない人がいる、という事実にお気づきでしょうか。
いるんです。実際に。しょっちゅうケアレスミスをしている人がいる一方で、疲れているはずなのに驚くほどケアレスミスを冒さない人がいるんです。
これは一体、何故なのでしょうか?
「ケアレスミス」が起こるもう一つの「原因」とは何か?
疲れてくると当たり前のようにケアレスミスを冒しまくる人がいる一方で、疲れているはずなのに絶対にと言っていいほどケアレスミスを冒さない人がいます。
それは何故か?
それは「癖」だからです。
そうです。意外と思われる方もいらっしゃるでしょうが、ケアレスミスを引き起こす第二の「原因」は、「癖」なのです。
指定されている条件を見落としてしまう「癖」のある人が、指定されている条件を見落としてしまうのです。
数字や符号の書き写し間違いをしてしまう「癖」のある人が、数字や符号の書き写し間違いをしてしまうのです。
解答を記入する欄を間違えてしまう「癖」のある人が、解答を記入する欄を間違えてしまうのです。
そういう人たちは、疲れてくると、つまり「脳」が疲労してくると、毎回、同じケアレスミスを繰り返してしまいます。それは、そういう「癖」があるからなのです。
しかし、「癖」を直すことはなかなか難しいことですよね。なぜなら、「癖」とは、人が無意識のうちにおこなってしまう習慣的な行動ですから、直そうと思ってもなかなか直りません。
でも、「対策」をすることはできます。「対策」をすることによって、ケアレスミスをできるだけ起こさないようにすることはできるんです。
では、どういう「対策」をすればいいのでしょうか?
「ケアレスミス」を起こさないようにするための「対策」とは?
自分がケアレスミスを起こさないようにするためには、次の三つのステップを踏むことによって、ケアレスミスを起こさないようにする「対策」をすればいいのです。
第一は、自分が犯したケアレスミスの事例を記録しまとめること。
第二は、自分のケアレスミスの事例を分析し、共通する「パターン」を発見すること。
第三は、そのケアレスミスのパターンごとに、ミスを防止するための「対策」を立てること。
以下、順番に見ていきましょう。
ケアレスミスの実例を記録しまとめる
まず、自分が実際にケアレスミスをした時の実例を集めます。
自分がケアレスミスを冒すたびに、そのミスをメモし、「ケアレスミス記録ノート」にまとめるのです。
例えば、
・問題の読み間違いをしてしまった、
・与えられている条件を見落としてしまった、
・解答欄を間違えてしまった、などなど。
また、計算ミスをした場合には、
・数字や符号を書き間違えてしまった、
・(かっこ)を抜かしてしまった、
・単純な計算を間違えてしまった、
だけではなく、どういうふうに間違えたのかも、書き記しておく方がいいです。
例えば、
指定されている条件を見落としてしまった場合、見落とした条件も記録しておきましょう。「少数第○位まで求めよ」「分数で答えよ」「kmで答えよ」「ただし○○とは限りません」「ただし○○として計算しなさい」などといった、見落としてしまった条件も記しておくのです。
数字や符号を間違えて書き写してしまった場合、「計算の途中で6を0に間違えて書き写した」「-を+に書き間違えた」「(かっこ)の位置を間違えた」「(かっこ)を抜かしてしまった)など、とできるだけ具体的にです。
共通する「パターン」を発見する
このように、自分が試験で実際に冒してしまったケアレスミスをできるだけたくさん集めたら、今度は分析をします。
そして、それらのケアレスミスに共通する「パターン」を見つけるのです。
ケアレスミスは偶発的なもので、一見バラバラで関連性のないもののように思えます。
しかし、自分の計算ミスをある程の数を集め、それらを全体として見てみると、自分のケアレスミスにある種の「パターン」があることがわかってくるはずです。
共通する「パターン」とは、例えば、
指定されている条件を見落としてしまった場合は、問題文の途中に書かれていた時には見落としてはいないが、問題文の最後に書かれていた時に見落としてしまう、とか。
数字や符号を間違えて書き写してしまった場合は、6を0に間違えて書き写してしまうことが多い、とか、-を+に書き写し間違えることが多い、とか。
記入する解答欄を間違えてしまった場合は、後半の問題になるほど間違えることが多くなる、とか。
ケアレスミスを防止するための「対策」を立てる
自分が冒してしまうケアレスミスのパターンが分かったら、次は「対策」です。
どうすればそのようなケアレスミスを防ぐことができるのか、
どのような注意をすればそのようなパターンのケアレスミスをしないようにできるのか、
その「対策」とは、「新たな癖」をつけることです。
「癖」には「癖」です。
その人の「癖」で引き起こされるケアレスミスは、その人の「新たな癖」よって防ぐ、というのが、ケアレスミスを防ぐ「対策」なのです。
例えば、
問題文の最後に書かれていた時に指定されている条件を見落としてしまう、というケアレスミスの場合は、もう一度、特に問題文の最後の部分を読み直し確認する、という「新たな癖」をつけるのです。
6を0に間違えて書き写してしまう、というケアレスミスの場合は、紛らわしい数字を書くのを改め、普段から数字を丁寧に書く「新たな癖」をつけるのです。
-を+に書き写し間違えてしまう、というケアレスミスの場合は、-の符号を書き写す時に特に注意をする、という「新たな癖」をつけるのです。
後半の問題になるほど記入する解答欄を間違えてしまう、というケアレスミスの場合は、後半の問題になればなるほど記入する解答欄を確認する、という「新たな癖」をつけるのです。
また、先ほどの、問題文で指定されている条件を見落としてしまう、というケアレスミスの場合は、指定されている条件にアンダーラインを引くという「新たな癖」をつけるのでもいいと思います。
そして、ほっとして気を抜いてしまい、計算の最後の部分で計算ミスを冒してしまうというケアレスミスをすることが多い場合は、毎回、最後の部分の計算をする時に特に注意をしながら丁寧に計算をする、という「新たな癖」をつけることで、計算ミスを防ぐことができるでしょう。
要は、どんどん計算を進めていっていい部分と、注意をしながら丁寧に計算を進めていく部分とを立て分ける「新たな癖」をつけるということです。
計算ミスを防ぐために普段から心がけておくべきことは?
今まで見てきたように、計算ミスをなくすための最も効果的な方法とは、
第一に、「基本概念」を理解しておく。
第二に、「計算力」を身につけるために十分な問題演習をしておく。
第三に、「計算ミスをしにくい計算の仕方」をする。
第四に、自分の「ケアレスミス」を分析し「対策」を立てておく。
以上のことを「普段から心がけておく」と良いでしょう。
それから、最後に、アドバイスを一つ、付け加えておきます。
数学の試験を受けるときには、あらかじめ各問題を解く時間を配分してから解き始めると良いのですが、その時に、「ケアレスミスを直すための見直しの時間」をあらかじめ取っておくと良いでしょう。
計算ミスを防ぐための「対策」を十分にやったとは言え、それでも計算ミスは起こってしまうかも知れません。
その時に、「見直しをし、ケアレスミスを発見し、落ち着いて計算をし直す」ということができれば、ケアレスミスを直すことができます。
そのために、試験時間の最後の5分は「ケアレスミスを直すための見直しの時間」として、あらかじめ時間配分をしておくのが良いと思います。
それでは、数学の試験、計算ミスをしないように、頑張りましょう!
・・・
次回記事:
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