エビングハウスの記憶実験から導き出された記憶に関する法則とは?復習はいつするのが一番効率的なのか⑥

前回まで、エビングハウスの記憶実験について見てきましたが、この実験で明らかになったことは、「節約率」だけではありませんでした。

なんと、記憶に関する重要な法則がいくつも発見されたのです。

今回は、今では当たり前のこととして誰もが知っているであろう記憶に関する法則が、実はエビングハウスの実験によって明らかにされたのだ、ということについて見ていきたいと思います。

それでは、エビングハウスの実験結果から、記憶に関するどのような法則が導き出されたのでしょうか?

エビングハウスの記憶実験で分かった記憶に関する法則とは?

ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスHermann Ebbinghaus1850~1909年の記憶実験は、人間の記憶については実験することが不可能である、という当時の常識をくつがえすものでした。

彼は、記憶についての実験は可能であり、実験結果を数学的に分析することによって、記憶に関する法則を導き出すことができるはずだ、と考えたのです。

そして、記憶実験をおこなった結果、エビングハウスは以下のような記憶に関する法則があることを明らかにしました。

第一に、学習が終わった直後に忘却が急速に起こり、時間の経過とともに忘却する割合が減少する、ということです。これが有名な「エビングハウスの忘却曲線」なのです。

エビングハウスはあくまでも「節約率」を測定したのであって「忘却率」を測定したのではありませんから、彼自身は「忘却曲線」とは言いませんでした。

「節約率」「忘却率」どう関係しているのかは実際のところは不明ですが、「節約率」が大きいということは、再学習時にかかる回数と時間が少ないということですから、それは「忘却率」が少ないからだろう、と一般的には考えられ、

その結果、彼の発見した法則は、「エビングハウスの節約曲線」ではなく、「エビングハウスの忘却曲線」として知られることになったのです。

次に、エビングハウスが記憶実験から導き出した第二の法則は、無意味な記憶材料は意味のある記憶材料より覚えるのが難しい、ということです。

意味を持った単語や用語、詩や小説の一部分を記憶材料にした方が覚えやすいことは、実験するまでもなく、誰もが経験的に知っていることではありましたが、

エビングハウスは、実際に実験することで、無意味な記憶材料を覚えるのには思ったよりも回数と時間がかかることを明らかにしたのです。

もっとも、彼が「無意味な音節」を記憶実験で使用した理由は、前々回見たように、どの記憶材料を選んでも覚えやすさが同じである、という記憶材料の均一性を担保したかったからなのですが。

そして、エビングハウスが記憶実験から導き出した第三の法則は、記憶する量が多くなればなるほど記憶することが困難になる、ということです。

つまり、「無意味な音節」を200個覚える時に繰り返した反復回数は、100個覚える時に繰り返した反復回数よりも多くなってしまったのです。

例を挙げると、100個覚える時には10回反復すれば覚えられたが、200個覚える時には10回の反復では覚えられず、25回もの反復が必要だった、ということです。

反復回数が増えてしまうということは、記憶する個数が多くなればなるほど1個当たりに必要な学習時間も長くなってしまうことになりますよね。

さらに、エビングハウスが記憶実験から導き出した第四の法則は、疲労が蓄積されるにしたがって記憶することが難しくなる、ということです。

彼は、午後7時から学習を始めた時の成績より午前10時から学習を始めた時の成績の方が良い、ということを実験結果から導き出したのです。

確かに学校の授業内容も、頭がスッキリしている午前の1時限目の授業の方が、頭が疲れている午後の5時限目の授業よりも理解しやすい、ということが言えます。

この、疲労が記憶に及ぼす影響ついても、エビングハウスは実験することによって、初めて証明したのです。

エビングハウスが初めて実証した記憶に関する重要な原則とは?

さらにエビングハウスの記憶実験からは、以下のような記憶に関する重要な原則が導き出されています。

一つ目は、「過剰学習」の効果です。この効果はエビングハウスが初めて実証することに成功しました。

これは、完全に暗唱ができた時点でさらに反復学習を続けると再学習をする時の「節約率」が大きくなる、という原則で、

分かりやすく言えば、過剰に学習をすると再学習をする時にかかる時間が短くなる、ということです。

学習が完了した後もさらに学習を継続すると学習効果がより安定し固定する、ということは、その後の教育心理学たちの実験でも確認されています。

学習をすればするほど忘れ難くなる、学習した後すぐに復習をすれば覚えている量が多くなる、ということですね。

そりゃそうですよね。勉強をすればするほど覚えていられる量が増えて、忘れにくくなるのは当たり前です。そうでなければ苦労して勉強する意味がないじゃないですか。

二つ目は、「分散効果」と言われる原則です。この原則もエビングハウスが初めて実験結果により明らかにしました。

エビングハウスは同じ「無意味な音節」の再学習を1日ごとに3回繰り返しました。そうすると、再学習をする度に節約率が大きくなっていったのです。

つまり、再学習を繰り返す度に再学習にかかる時間が短くなる、ということです。

3回目の再学習をした後の1ヶ月後の節約率はほとんど90%に近い数値ですから、1日ごとに3回復習をすれば1ヶ月後に復習する時は最初の10倍のスピードで学習できちゃうってことです。これってすごいですよね。

三つ目は、「初頭効果」「新近効果(新近性効果)」の発見です。多くの記憶材料を覚える場合、最初と最後に示された記憶材料がより記憶に残りやすい、という原則です。これもエビングハウスによって初めて実証されました。

「初頭効果」とは、一番初めに触れた情報は記憶の保持率が高い、というもので、

第一印象がいつまでも残り続けるということは経験的にも理解できますね。

「新近効果(新近性効果)」とは、「初頭効果」の反対で、一番最後に示された情報は記憶に残りやすい、というものです。

時間がたてばたつほど記憶は薄れていきますが、現在に近い時点で触れた情報ほど時間がまだたっていないので思い出しやすいですよね。

ちなみに、インターネットでの解説を見てみると、時々「親近効果(親近性効果)」と記述されているサイトがありますが、それは間違いです(念のため)。

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今回は、エビングハウスが記憶実験で初めて実証した記憶に関する基本的な法則について見てきました。

第一に、学習が終わった直後に忘却が急速に起こり、時間の経過とともに忘却する割合が減少する、とい法則。

第二は、無意味な記憶材料は意味のある記憶材料より覚えるのが難しい、という法則。

第三は、記憶する量が多くなればなるほど記憶することが困難になる、という法則。

第四は、疲労が蓄積されるにしたがって記憶することが難しくなる、という法則。

さらに、エビングハウスが初めて発見した記憶に関する重要な原則としては、

一つ目が「過剰学習」の効果、

二つ目が「分散効果」

三つ目が「初頭効果」「新近効果(新近性効果)」

を挙げることができます。

それでは、エビングハウスが発見したこれらの法則および原則は、私たちが勉強する上でどのように活かすことができるのでしょうか?

次回は、その辺のところを探ってみたいと思っています。

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【エビングハウス10講】

① エビングハウスの忘却曲線の解説のほとんどは間違っているって本当?

② エビングハウスは記憶実験で節約率をどうやって計算したんだろう?

③ エビングハウスの記憶実験は具体的にどのようにおこなわれたのか?

④ エビングハウスはどうして無意味な音節を記憶実験の材料として使ったのだろう?

⑤ エビングハウスはどうして自分自身を記憶実験の被験者にしたんだろう?

⑥ エビングハウスの記憶実験から導き出された記憶に関する法則とは?(今回の記事)

⑦ エビングハウスの忘却曲線から導き出された復習のベストタイミングとは?

⑧ エビングハウスの記憶実験から導き出された受験生向けの「一番効率的な復習法」とは?

⑨ エビングハウスの「節約率」で説明できる「一番効率的な復習法」!

⑩ エビングハウスの記憶実験と海馬と偏桃体が織りなす記憶のメカニズム!

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次回記事エビングハウスの忘却曲線から導き出された復習のベストタイミングとは?復習はいつするのが一番効率的なのか⑦

前回記事:エビングハウスはどうして自分自身を記憶実験の被験者にしたんだろう?復習はいつするのが一番効率的なのか⑤

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